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東京高等裁判所 昭和37年(く)70号 決定

少年 H(昭一九・五・二六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、右少年に対する原裁判所の保護処分の決定につき、処分が著しく不当であるというに帰する。

案ずるに、右少年に対する少年保護事件記録及び少年調査記録によれば、少年は、昭和十九年五月二十六日広島県尾道市○○町××番地○谷○三と同○子との間の子として出生した者であるが、父○三は母○子が少年を懐胎中である同年五月五日頃死亡し、○三の弟秀○(本件抗告申立人)が昭和二十一年頃右○子と婚姻し同女の家に入籍し、以て現在に及んでいること、即ち、少年の保護者父として本件抗告の申立をした○谷秀○と少年との間には実親子関係がなく、単に継親子関係あるに過ぎないことが明らである。しかして、日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七四号、同年五月三日より施行)第三条によれば、継父母と継子との間に親子間におけると同一の親族関係を生ずる旨を定めた旧民法第七二八条の規定は、右措置法施行後はその適用を排除され、右措置法第六条の「父母」には継父母を包含しないものと解するのを相当とし(昭和二十八年十一月二十六日最高裁判所第一小法廷判決、最高裁判所民事判例集七巻一一号一二八八頁参照)、現行民法もまた右の趣旨により旧民法第七二八条所定の如き法定親子関係を否定しているのであるから、本件抗告申立人○谷秀○は当然には少年の法定代理人(親権者父)となる者でなく、記録を精査しても、同人が少年の法定代理人たるその他の事由を認め難く、まして同人が少年の附添人となつている事実も認められない。

してみれば、本件抗告は抗告権のない者のした不適法な抗告であり、少年法第三三条第一項前段により棄却を免がれない。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 岩田誠 判事 高野重秋 判事 栗田正)

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